夏休みが教えてくれる  |  davinci

 
ブンゲイ ダ・ヴィンチ

すくなくとも現状ではそんなことよりもこれをどう小説に活かすかってことに興味が向いており、次回連載分の修整する箇所についていろいろと頭をめぐらせた。もしほんとにフジタエリコの正体が柴田だったとしたら、アイデア料として飯でも奢らんといかんな、なんてことを思いながら。いやいや、これだけの悪戯をされて、その真犯人がもしやつだったとしたら、被(こうむ)った精神的苦痛の代償として逆に飯でも奢ってもらわんといかんな、なんてことを思いながら。
                  (続)

 しかし、だからといってフジタエリコ=柴田ということに固執しているのかというとそんなこともなくて(その可能性はあくまで限りなくゼロに近いんだから)、当然のようにそのほかの可能性についても考察の目を向けてみる。今回の手紙でフジタエリコはぼくの顔見知りであることを告白してきた。だからといってそれが本当だなんてことは疑わしいし、本当であることを立証しようもないんだけど、おんなじように嘘であるということも証拠不十分でいいきることができない。要はようわからんということで、確実にいえるのはどうにも胡散くさく、疑わしいやつであるということである。
 どうしても本当のことを知りたいのであればフジタエリコのメールアドレスに返事を送り、実際に会ってみればいいのであるが、そこまでやろうとは思わない(そもそも、そのような行動に出たとしても、実際に会ったりできるのかは謎だが)。その正体に興味がないこともないが、

夏休みが教えてくれる

なかがわ・みつる●1977年、奈良県生まれ。2006年、ネット上に掲載された短編『POKKA POKKA』への読者投票を経て、第1回ダ・ヴィンチ文学賞編集長特別賞を受賞。07年に初の単行本『青空チルアウト』を、08年には文庫『POKKA POKKA』を刊行した。

夏休みが教えてくれる
  • 著者:中川 充
作 成 日:2009 年 03月 05日
発   行:中川 充
BSBN 1-01-00022930
ブックフォーマット:#429

Mitsuru Nakagawa

中川 充

 

第10回を読む

 
 
 

 
 
 
中川 充

 
 
 
Mitsuru Nakagawa