タマママーンを探して  |  davinci

 そもそもコロネに会うのは二年ぶりだ……。

 ブレイクしてから一度も会っていない……というか、呼ばれなくなった。

 正直、電車で行きたいが、社会的には無職の身、妻も節約のために自転車でお店まで片道三キロをがんばっている。

 電車で……なんていいだせない。

 ジャーゴ……信号で停止。背中にはコンビニ。

建設現場で働いている方々が、現場に向かう車からたくさん降りてきた。

 

タマママーンを探して

ブンゲイ ダ・ヴィンチ

 僕はふたたび、「なんかごめんなさい」という気持ちに……コンビニには秋公開のタマママーンの映画のポスターが貼ってありましたが、ミカには黙って、青信号だレッツゴー。


 とりあえず、距離的には短いが、出不精の自分にとってはそこそこの旅……。娘との大事な時間でもある……。

ミカは黙っていれば、ずっと自分の頭の中で遊んでしまう性格。

 きっとこのタマママーンの口笛もほおっておけば コロネの自宅につくまで吹き続けるだろう……。目的は最悪だが道中は楽しく行きたい。

 僕はうるさい大通りから一本はいった住宅地の裏道に進路を変更し、声のボリュームをすこし上げ、

「アイドルさんこんにちは〜〜!」

「さ!今日のゲストは今CMに引っ張りだこのミカさんだー」

とラジオ番組風にテンション高くどなりを入れた。

「ぴ〜ぴぴぴ〜」

ミカは特に反応を見せずに口笛……。

「こんにちは〜〜〜ミカーーさ〜〜ん?」

「なにーきこえてるよー」

 

タマママーンを探して

ブンゲイ ダ・ヴィンチ

(くさいもの扱いする前兆……)

「今ミカさんの一番のお気に入りのアニメ、タマママーンってどこが面白いんですか〜」

 また微妙な反応を見せるかと思ったのですが、話題がタマママーンだと……

「えとねー、戦うとこ。でもねやっつけたあとねタママあげるの優しいんだよ」と元気に答えた……。

(タマママーンは敵をやっつけたあと、自分の魂のかけら、タママを敵に分け与え、(これは正義の味方タマママーンの魂なので正義の素ともよぶらしいです)敵を改心させるのです、ってわかる自分が少し嫌だ)

「へ……へーそうなんですか〜〜」

 ……なにもいえず奥歯をかみしめごめんなさい。

「ママいってたもんミカとずっといたいよ幼稚園のお迎えもしたいよって……」

 ごめんなさい……。

 客はいないけどいつまでも営業しているラーメン屋の脇の坂を下り、大きな公園につくまで沈黙。後ろに乗っけてるミカがなんだか幼稚園生だとは思えなかった。

 昼の公園……。

 そこでは家族の幸せな声がこだましていた……。

 いそいで公園をよこぎろうとした時、ミカが突然

「ストーップ」と叫んだ。

タマママーンを探して

ブンゲイ ダ・ヴィンチ

 心の中でアンパンマンのパクリだよなぁとつぶやく。

「でも、きっとミカさんのパパのほうが優しいんじゃないですか〜〜?」

 とにかく今はタマママーンよりは優位にいたい……。いやいさせてくれ娘よと願っても答えは

「優しくないよ〜」

「な、なんでよ〜どこがよ〜」と番組を忘れ必死に僕。

(ミカのために俺はいろいろ切り詰めて入浴剤かってんだぞ〜!)

「だってママはたらいてるもん」

 
 

「ストーップ」と叫んだ。

 タマママーンより株を下げてはならないと、とまりたくなかったがとりあえずブレーキ。「ゆーちゃーんだ!ゆーちゃーん!」

 どうやら公園に幼稚園の友達がいるようだ。

 するとミカーと元気な女の子が機関車の遊具のほうからから飛び出してきた。

「どこいくの?ミカー 」僕は無職だが一応人の親なので、それなりのふるまいをする。

「ままは? 一人で外出ちゃあぶないよ〜」

 するとゆーちゃん「あっちにいるよーー!」と空のほうを指差した……。

「え……」と一瞬青ざめる僕。

 やはりそれぞれ家庭にはイロイロあるんだな……と、どこかで無職のじぶんを正当化しようとふむふむしていると、

「すいませ〜ん」とすらりとゆうちゃん越しに足が見えた。顔をあげると、ユーちゃんのママ……。針葉樹の葉にブツブツ刺され心が弱っていたせいか、暑さのせいか、ユーちゃんママはキラキラにみえた。

「今からねタマママーンのサインもらいにいくのー 」

「えーえーうそー!いいなーーー!」

ブンゲイ ダ・ヴィンチ

タマママーンを探して

 このユーちゃんの元気なリアクションでタマママーンのメジャー度を知らしめられ、ランサー級の針葉樹がグサリ刺さった。

「ユーちゃんのももらってくるね!」

 汗だらけ、コロネに会いにいくのでいつもの普段着以下だった僕は、キラキラのユーちゃんママの手前、嫌な印象を与えないように、ただただニマニマしてこの場をやりすごそうとしていたのですが、ユーちゃんママ、

「何かのイベントとかあるんですか」と、大人の笑顔で質問をなげかけてきた。

思わず僕

ブンゲイ ダ・ヴィンチ

タマママーンを探して

 

「いや〜作者のコロネと知り合いなんすよ〜」と、最悪だ……、ミカの同級生のママ達には僕の職業がばれていない。というか妻がひたかくしにしているため、自分は妻に食わしてもらっている無職さんだと思われている。

(いや、、まあ、、そのとおりなのですが)

 でもどこかで夢を追っている素敵な漫画家であることは知ってもらいたい……そんな気持ちも手伝って思わず出てしまった……。

 それを聞いてゆうちゃんママ

「えー!そうなんですか〜!」と両手を合掌し、妻にはないすばらしくストレートな反応、拍手拍手!

「いいですかユーの分もお願いしちゃて」

「あ〜も〜全然全然! なんならクラス分いけますよ〜? はは……」

「それじゃお願いします」

 ユーちゃんもそれにつづいておねがいしまーすとペコリ。

 僕もニマニマとしながら『どうも〜』と大人のふるまい、ユーちゃん家族が点になるまでミカはじゃねーと叫んでいた。

 自己嫌悪までともいかなかったが、なんだか嫌な気分に陥る手前、穴のふちでユラユラ、な感じだったが、

ブンゲイ ダ・ヴィンチ

タマママーンを探して

 

ユーちゃんママからは何かパワーを頂き、ペダルはかるかった。

 が……1キロくらい漕いだところで反省……。

 自分が働いていればきっと妻もきらきらをキープしていたのでは……と。

 心でごめんと謝ったと同時に、今朝のあの妻の顔を思い出し「イラ!」。

 ごめん撤回!

 ジャーゴジャーゴ。

 怒りもあいまってペダルはさらに軽くなった。

タマママーンを探して

 ミカは指でなにやらカタチ作っている。もう飽きた……という態度。

 思わず「かえるか〜〜〜」と口をついて出てしまった。

 もちろんミカの反応は、

「やーだーいくーのーサインもらうのー!」

「もお」……と思いながらも、去年のミカの誕生日に買って上げられなかった、お料理トントンのパッケージが頭の中をかすめる……。

 もともと小さじいっぱい程度しかないプライドを投げ捨てての電話。

 コロネが売れて引っ越していることを願いながら……。

 ジャーゴジャーゴ。

 あと2キロくらいの地点、はいてきたジーンズは汗で体と一体化してしまった。

 ミカはタマママーンの歌にあきたらしく、口笛で自作であろう謎の曲をふいている。

せみの声も心地いいくらいになった。

 さて……僕はゆるい坂を登りきったところで、ペダルから足を下ろす。

 とりあえずコロネに仕事場にいるのかの確認の電話を、引き返すのに楽なところでしとかなくては……。

 ミカは指でなにやらカタチ作っている。もう飽きた……という態度。

ブンゲイ ダ・ヴィンチ
 
 

 プルルルルル

 プルルルルル

 ガチャ……

「もしもし?」

 電話に出たのは若い女性だった。

 アシスタントか……。

「あ……あのあ〜〜メディア出版のものなんですが〜〜〜」

 我ながらなかなかな機転の利かせ方……。

タマママーンを探して

「え……メディア出版さんですか?」

「コロネ先生、先生ご在宅ですか〜」

「あ……え……少々お待ちください」

 ……電話の保留音。

 もちろん曲はタマママーン。

 ガチャン!

 とりあえずあいつは仕事場にいる、
事を確認できたので、電話をぶっちぎる僕。

「いるんだ……」と独り言……。

ブンゲイ ダ・ヴィンチ